『Managing Complexity』の展開を強化。次世代に向け多くの変化適応型リーダーの輩出を目指す

「あのハーバードを蹴ってでも、入りたい!」という優秀な学生が続出し、世界最難関校として注目されるミネルバ大学。最近ではWURIが発表する「世界で最もイノベーティブな大学」に選出されました。そんな同校を旗艦パートナーとする米国ミネルバプロジェクト社(以下ミネルバ)と昨年、日本初となる事業提携を交わしたのが『こっから社』です。同社はこの春から更なる高みを目指し、新たに異業種コースも加え『Managing Complexity』の展開を強化しています。今回は、同社代表社員であり講師を務める黒川公晴氏に、ミネルバが独自開発した、次世代リーダーシッププログラムの特徴や効果などを伺います。

講演者

■ゲストスピーカー
黒川 公晴氏
合同会社こっから 代表社員/米国ミネルバ講師/組織開発ファシリテーター/一般社団法人Brain Active with 代表理事
2006年外務省入省。2009年米国ペンシルバニア大学で組織開発修士を取得後、外交官としてワシントンDC、イスラエル/パレスチナに駐在。日米の通商交渉や日本のアートプロモーション等を担当。2013年に帰国後、安保・経済領域での様々な交渉に携わる傍ら、首相・外相の英語通訳を務める。2018年に独立以降、ファシリテーター・コーチとして国内外の企業の人材・組織開発を支援。内省を通じたリーダーシップ育成、事業開発、自立型組織づくり、ビジョン・バリュー策定、事業開発、紛争解決等のサポートを行う。

■モデレーター 畑 俊彰
株式会社インヴィニオクロス 代表取締役 兼 株式会社インヴィニオ プロデューサー
2004年に株式会社ベンチャー・リンク入社。2009年日本郵便株式会社に入社。同社にて、組織風土改革、異業種他社との共創PJの推進など、多数の組織横断プロジェクトを牽引。2018年株式会社インヴィニオに入社。企業の組織変革・リーダー育成に携わる。2021年3月より現職。

ミネルバの理念や学習方法の特徴は?

畑俊彰(以下、畑):昨年、ミネルバと日本初となる事業提携されましたが、何か特別なアプローチをされたのですか?

黒川公晴氏(以下、黒川):いえ、 こちらからアプローチをしていったというよりは、潮流に乗ったという感じでしょうか?

こっから社の本業は組織・人材開発ですが、同時に『Playful』であり続ける事を理念に掲げ、それぞれが好きな事業を展開している社員6人のユニークな会社です。例えば飲食業という手段でそれを表現したり、書店という形で表現したりと、それぞれのメンバーがあらゆる形で自身の「Playful=パッションの源泉」を体現しています。私も本業のファシリテーター以外では空間作りに興味があり、脳科学に基づいて人をより創発的にしたり自己開示を促したりするオランダ発の空間デザインを日本に普及するために、新たな団体を立ち上げたりしています。ミネルバとの連携も私の「Playful」の延長です。始まりは外部講師としてでしたが、ご縁がつながり、会社として事業提携するに至りました。

畑:実際、プログラムに触れてみて、何か新しい発見はありましたか?

黒川:すごくしっくりきています。弊社の人材開発や組織開発では元々、一人ひとりの「あり方」を大切にしています。イノベーションにしても、自律的な組織づくりにしても、個人やチームが持つパッションの源泉につながるのが大事であると。最近は、それも大事なんだけど、リーダーがその後様々な困難を乗り越えて目標に辿り着くためには、具体的なツールが必要になってくると強く感じていました。そこに来てミネルバのプログラムでは、複雑で困難な状況下でリーダーがいかにヒトとコトを動かして物事を推進すべきかの具体的な思考法を学ことができる。弊社の事業との相互補完性を感じます。

畑: なるほど。それでは次に、ミネルバの教育理念や実際の学習方法などを教えてください。

黒川:ミネルバでは、『Critical Wisdom=真に必要とされる知恵』を世界に届けるという理念の下、『実践的な知恵』を育くむ学習を強化しています。科学に基づく16の学習原則を敷いて、徹底的なLearningをしていくのが特徴です。次の4つの仕組みはどのプログラムにも導入されており、カリキュラムを進めていけば、自然と知識が身に付いている状態がつくり出され、実践で役立つスキルにまで落とし込まれます。

1.文脈横断・足場式カリキュラム(Cross Contextual Scaffolding Curriculum)
2.完全アクティブラーニング(Fully Active Learning)
3.ミネルバ 独自のオンラインシステム、フォーラム(Forum™)
4.反転学習(Flipped Learning)

畑:一般的な授業とは違い、レクチャーがないとお聞きしていますが…。

黒川:はい。反転学習(Flipped Learning)と呼ばれる学習形態で、授業中に知識をインプットする作業はありません。しかも、完全アクティブラーニング(Fully Active Learning)という教授法で、75%以上の時間は受講者が知識の応用と実践に集中している状態を作り出します。そのため、事前に英語の読み物をインプットして、自分の経験と紐付けたアウトプットまでの予習が必要です。授業で行うのは、新たな知恵のクリエーションと応用だけ。毎回、インプット、クリエーション、実践、振り返り、インプット…、このサイクルを回し続け、学習を記憶し、実践し、スキルにまで記憶させます。

セッション10から成る最先端のプログラム内容とは?

畑: この春から展開が活発になっている、次世代リーターシッププログラムManaging Complexity』の特徴を教えてください。

 黒川:はい。このプログラムは、複雑性が増していくグローバルなビジネス環境下で、リーダーに必要なcompetenceを育んでいただく、週に1回、10週間のコースです。

特徴は、10の講義テーマで構成されていて、システム思考が土台である点です。問題を局所的ではなくシステム全体の中でどう発生しているのかを俯瞰して捉える力です。。次に、自分にベクトルを向けてリーダーとしてどうありたいかを学び、最終的にはリーダーとしてどう意思決定するかまで導かれます。感情の知能指数といわれるEQやパーパス型リーダーシップ、行動心理、アジャイル思考などグローバルなリーダーを目指すために必要なスキルが習得できるのも特徴です。

畑:プログラムはどのように展開にしていきますか?

黒川:講義テーマに沿ってセッション0から10まで設けています。まず、セッション0は学びの土壌をつくる顔を合わせとオリエンテーションの場。ミネルバの学習科学がどんなメソッド、エビデンスに基づいているかを理解してもらいます。セッション1は、プログラムの土台となるシステム思考の講義です。意外に今の環境が複雑である事を自覚している方が少ないので、物事のそもそもの捉え方を変えるところから始めます。セッション2では、人間の⾏動はどのように定義され突き動かされるのかをモチベーション理論で学び、バイアスの対処法も習得。セッション3では先ほど言った自分自身のパーパスを描いてもらいます。セッション4では、共感力等から成るEQ(感情の知能指数)を大きなテーマに、他者にどう寄り添うか、他者をどう理解するかを学びます。共感力を理解するために、自分のいちばん強いこだわりを課題に選び、それとは真逆の立場に立って手紙を書くというワークもあります。

畑:とってもユニークなワークですね。これまでの事例では、どんなテーマがでてきましたか?

黒川:例えば、「人にはやりがい、働きがいがすごく大事だ!」と思っている人事担当の方は、「社員の働きがいなど全く意味はない。組織のいうとおりに働かせればいいのだ」という真逆の立場で手紙を書かれていました。このワークを含めて共感力を高め、人の読み解き方を理解したら、次のセッション5ではチームの読み解き方を学びます。チームの力構成がどんなふうになっているか。あるいは、リーダーとしてのパワーの源泉には、立場の力、情報の力、専門性の力、関係性の力と様々あるが、どの場面でどの力の源泉を使うのが、物事を動かしていくためにいちばん効果的かを学んでいく時間です。

畑: 思考、モチベーションやパーパス、感情のコントロールまでをスキルとして実践的に学ぶのですね。

黒川:はい。それらを学んだ上で、次のセッション6では、実際に自分の考えを伝えるためにコミュニケーションを学びます。具体的には、声のトーンの使い方、間の置き方、スピーチ構成のつくり方など手法論を習得します。認知的に数字やロジックを使う話し方と、感情に訴えかける話し方をどのように使い分けると、人はより動かされるかも自分でスピーチを作りながら習得します。

セッション7から、ようやく課題分析に入ります。課題の定義がいちばん大事、正確な定義さえできていればソリューションはすぐにアウトプットできるという前提で、課題分析の手法を学びます。セッション8では、定義した課題に対してどうやって解決策を見出すかがテーマとなります。具体的にはデザイン思考を使って、自分が選んだ課題に対しソリューションをアジャイルに考える訓練をします。

畑:分析結果を出すまでの過程も、大切な学びの時間なのですね。

黒川:時間を掛けて分析した結果から様々なソリューションを揃え、それをリーダーとしてどう決めていくかを、セッション9で学びます。ここでは、いかに自分の主観やバイアスに塗れずに、素面になって合理的な決定を下すかを、WRAPフレームワークなどを使いトレーニングをします。最終セッションでは、自分の現業でリアルに起きている経営課題、事業課題などを持ち込んで9週間で学んだ実践的な知恵を総動員させ分析。そして、ソリューションを提案しレポートに纏め、受講者と共に議論をします。

フィードバックや効果測定、評価はどのようにする?

 畑:最終ゴールを目指す1週1週はとても有意義な時間となりそうですね。各セッション後のフィードバックや効果測定も特徴的と聞いています。

黒川:はい。先ほどご紹介した『フォーラム(Forum™)』が画期的な仕事をしており、受講者の発⾔時間を瞬時に⾊で可視化したり、授業中の発言や作業を個人ごとに全て自動的に記録してくれています。

更には、各セッションのテーマに沿って合計18の思考スキル(#LO=Learning Outcomes)が定義されていて、それぞれが次世代のリーダーに必要なコンピテンシーを示しています。各#LOは1〜5段階の理解度でレベル分けされているので、オンタイムでの詳細なフィードバックや効果測定が可能となります。

最終的には10週間でいかに成長したかを確認するために、事後アセスメントを行っています。セッション0とセッション10の段階で比べて、各#LOに沿ってどれだけ成長したかを可視化します。

畑:『Managing Complexity』は製品としても高く評価もされていますね。

黒川:はい。データで申し上げますと、昨年の10月からスタートして、現在の見込みで150名程の卒業生を輩出しました。毎回、サーベイを取っており、これまでNPSは平均して40くらいです。NPSはマイナスが相場といわれるなかで、相当に高い評価をいただきました。

受講された方からは、やはり「学びが実践につながり、ちゃんと使える」という声が多かったですね。研修後の実体験として「学習習慣やラーニングアジリティーが身についた」「キャリアを振り返り、セオリーと結びつけ再現性が高められた」「全く関わり合いのない管理職どうしに共通言語ができ、組織の波及力につながった」など、これまでとは違った物事の捉え方でプラス効果になっているという声も聞かれました。

畑:さて、この春から新しい講師陣も参入されていますよね?

黒川:そうですね。今回、新たに7名をファカルティとして迎え入れています(注:2022年秋には更に7名拡充予定)。皆さんに日本人で、授業も日本語で行います。但し、教材は英語です。全員、何らかの事業経営に携わっていたり、組織の複雑性に日々、直面しそれを乗り越えている方々です。ご自身の体験からアドバイス、フィードバックができる方々が揃っています。

畑:ますます、プログラムへ参加を希望される方が増えそうですね。導入形態はどんなふうになっていますか?

黒川:企業で導入するには2通りの方法があります。1つは自社単独で10数名を派遣するというやり方で、スケジュールなどは個別に相談させていただく方法。もう1つは、私たちがスケジュールを設定して、空いている枠に入っていただく異業種コースになります。16名を基本にして、1社4名が原則、各社に同時入っていただく形です。業種を問わず大企業の経営層の方からスタートアップの経営者まで、一緒になって学びあえる刺激ある座組です。ちょうど現在、9月と12月からスタートするコースの参加企業を募集しておりますので、ぜひ、このプログラムで『実践的な知恵』を身に付けて、ますます複雑化する環境下でもAdaptive Leadership(変化適応型リーダーシップ)が発揮できる人材へと成長していただければと思います。

(本プログラムについてより詳しい内容を知りたい方は、「こっから×ミネルバ運営チーム(minerva.admin@kokkara01.com)までお気軽にご連絡ください。)」)

 

弊社「株式会社インヴィニオクロス」は、人や組織が持つ「感情」や「内発的動機」に着目し、多彩なバックグラウンドを持ったコーチ&ファシリテーター陣とともに、人や組織の変革プロセス&組織の拡大に伴い必ず起こる組織の諸問題の解消に伴走しています。クライアント企業は、大企業~成長プロセスにあるスタートアップ企業まで様々です。

パッケージサービスではない、それぞれの企業のカルチャーやニーズ(課題)に合わせたコンサルティングやプログラム設計を強みとしています。随時無料コンサルティングを実施しておりますので、組織に関するお困りごと・お悩みなどございましたら、お気軽にご相談ください。

無料で問い合わせる

 

 

Related Topics