トップダウン型から自律型への組織変革 │推進のヒントは「第三者の目」と「外部リソース活用」
講演者
■モデレーター
渡邉 峰丈 氏
株式会社Another works
大手人材会社パーソナルに新卒入社し、製造・物流・通信事業に特化した領域で約2年間法人営業に従事。人材紹介、人材派遣、業務委託領域にて、約100社・求職者300人ほどの最小支援に関わる。その後2021年8月に株式会社Another worksに入社。インサイドセールス立ち上げの第一人者として「複業クラウド」の営業組織構築に従事。THE MODEL組織におけるインサイドセールスのKPI設計やナーチャリングフローを確立。
■スピーカー
畑 俊彰
株式会社インヴィニオクロス 代表取締役 兼 株式会社インヴィニオ プロデューサー
2004年に株式会社ベンチャー・リンク入社。2009年日本郵便株式会社に入社。同社にて、組織風土改革、異業種他社との共創PJの推進など、多数の組織横断プロジェクトを牽引。2018年株式会社インヴィニオに入社。企業の組織変革・リーダー育成に携わる。2021年3月より現職。
自律型組織が求められる時代背景
渡邉峰丈氏(以下、渡邉):コーチング事業や場創りの支援を行っている畑さんですが、いわゆる「トップダウン型」企業の現状についてお話を聞かせてください。
畑俊彰(以下、畑):さまざまな企業で次世代のリーダー育成を支援していますが、最近とくに問題意識を持っているのは、業種業態問わず「組織が疲弊している」ことです。事業環境はこの10〜20年で大きく変わりました。
どの会社も既存事業を行いつつ、新規事業も推進しなければなりません。世代間によって価値観や仕事観も違うなか、調整しつつ進めるのは難しく、みなさん悩みながら経営やマネジメントをしているんですね。
今までのように、上層部が描いた戦略を社員に示し、それに基づいて社員が動く「トップダウン」の経営スタイルは、もはや通用しません。
トップダウン型企業に限った話ではありませんが、今、とくに歴史ある会社で「優秀な若手からどんどん辞めていく」問題が切実です。若手はキャリアを描けずモチベーションが下がり、すぐ辞めてしまいます。
一方で管理職の方は、役職や年齢もあって悩みを簡単に吐露できない状況。キャリアの不安や、新規事業とこれまでの事業についての葛藤などが伝わってきます。
渡邉:問題を感じる中で、自律型組織が求められていると思いますが、その実態はどうでしょうか。
畑:人やカルチャーは簡単には変わらないので、どの企業も苦戦しています。今、マネージメントする立場の人たちは「自律型組織」としての歩みや学びをしていきていませんから。
だからこそ、今までのカルチャーを大きく変えている企業もあります。企業によって、大きく差がついていると感じますね。
社員の自律性を促す外部研修とは?
渡邉:社員の自律性を高める研修制度にはいろいろな方法があると思いますが、外部からの支援が重要なのはなぜでしょうか?
畑:最終的には「外部支援がなくても自走している組織づくり」が私達の理想ですが、外からの支援が必要になるフェーズがあります。
というのも、自分たちのカルチャーや思考のクセ、仕事のスタイル・当たり前や常識というのは、当人たちでは気付くのが難しいからです。
企業が描く理想の組織像や人物像と現状には、ギャップがあります。そのギャップを埋めるために外からの刺激や、利害関係がない第三者の介入が必要なケースがあるんです。
コーチ、講師、コンサルタント、または他社で同じような課題に取り組んでいる人に入ってもらうなど、外部からのフラットな目や刺激が必要なケースは多いですね。
渡邉:内部の人たちには本音で話せないというのはありますよね。企業からよく聞く悩みにはどんなものがありますか?
畑:ひとつは「世代間の価値観や仕事観、人生観のギャップ」の問題です。管理職の方たちが育ってきた環境と今があまりに違うので、若手に対する関わり方に戸惑っています。自分の成功体験を当てはめられない、噛み合わないなどの声も聞かれます。
一方、若い管理職の方は自分より年齢やキャリアが上の人達に、どうしたら気持ちよく働いてもらえるのか、どう関わればいいのかと悩む方が多いです。
他にも、管理職の方はプレイヤーとして成果をあげるよう求められる一方で、変革を叫ばれ、問題をひとりで抱えるケースも少なくありません。何が問題なのかを整理ができない人や、自分自身の問題には敢えて目を向けない人もいますね。
渡邉:こういった問題は、管理職やマネージャーも、言語化する機会がないとわからないかもしれません。
畑:そうですね。とくに長く勤めている人ほど、なぜ問題が生じているのか気づけないことも多いんです。
渡邉:解決策はいろいろあると思いますが、畑さんはなぜコーチングや場創り支援を行うのでしょうか。
畑:問題を解決するには、何が問題なのかを認識することがスタートラインです。そのためには抱えている問題や悩み、成し遂げたいことなど、一人ひとりに寄り添って聞く必要があると思っています。
しかし、インプット型の研修だけでは寄り添うのが難しいんですね。そこで、それぞれの価値観、仕事観、人生観、問題意識を顕在化するためのアプローチとして、コーチングや対話の場創りを支援しています。
渡邉:個人の想いや希望を言葉にするのは、重要なポイントなんですね。外部からの支援によって変化した組織には、どんな例がありますか?
畑:例えば去年は、大手製菓メーカー の相談に乗りました。3年前から取り組んでいる1on1制度がうまくいかず、それを解決するために呼ばれたんです。
みなさん真面目に取り組んでいるものの、マネージャーは「本当にこれがメンバーにとって意味があるのか」という不安を抱えていました。大企業ですので、工場長ひとり100人を抱えているケースもあるし、そもそも利害関係のある上司に話ができるかという問題もあるなど、うまくいきませんでした。
弊社が4ヶ月伴走し、行ったのは「今まで2年間の1on1の型を崩す」ことです。
200人以上の管理職の方たちに、これまでの1on1の取り組みでどんな変化があったか、何が起きたか、苦労やネガティブなことも含め吐き出してもらいました。そこで多くの悩みや知恵が表出したんです。
「会議室でなくてもいいよね」「時間は30分でなくてもいいかも」など、既存の型を崩していくと、これまで1on1にネガティブだった人も興味を持つようになりました。ある工場長は140人の部下全員と1on1を行い、その結果、工場の空気がガラっと変わったんです。
渡邉:140人ですか、桁が違いますね。このケースは対面でしたが、リモート型環境で自律型組織を作るには何が大切でしょうか。
畑:リモート環境下では、雑談がなくなるんですよね。弊社もオンラインになり、完全にリモートワークになって気付いたことです。
そこで、会議を変えました。意図的に雑談の時間を作り、お互いの悩みや状況をただただ話をする時間を多くしてみたんです。
渡邉:現在はリモートに慣れた企業も多いですよね。withコロナになって、変わったところは何でしょう?
畑:テレワーク環境になったことで良くなった、変わるきっかけになった企業も多数あります。その一方で、コロナをきっかけに今まで見えなかった問題が顕在化する会社もあり、二極化していると感じます。
外部人材を登用した組織創りとは?
渡邉:これまでの話とは相反する組織づくりに見える「外部人材を登用した組織創り」について、お聞きします。外部から自律した人材を登用し、社内のメンバーとどういう組織づくりをしているのでしょうか。
畑:インヴィニオクロスは、100%兼業人材の会社です。僕以外は、営業、研修、コーチング、ウェブマーケなどすべて全員本業がある人なんですよ。
渡邉:100%なんですね。社員の自律を促すサービスを展開するインヴィニオクロスさんの、経営戦略とは?
畑:僕自身が6、7年前から兼業をしてきた人間です。とくに立ち上げの段階で、ひとりを採用することの失敗リスクが大きいことを実感しています。一緒に働いてみないと、その人がパフォーマンスを発揮できるのか、彼・彼女らにとっていい場所なのかわかりません。
その点、兼業人材の方は自律していて、自分の強みや課題を持っている方たちです。会社でやりたいことや課題など、要件がしっかり見えていれば、とてもありがたい存在ですね。
事業課題も日々変わり、サービスも変えていく中で必要な人材も変わります。実績があり自社の理念に理解がある“その時に必要な人材”に、兼業というかたちで関わってもらえるのは助かります。
渡邉:必要な時に必要な人材を獲得するというのは、本当に大事ですよね。そもそも最初から自律している人が多く、育成時間の短縮につながると思います。兼業人材を獲得後の育成コストはどうですか?
畑:育成するという感覚はありません。もともとそれぞれの方がWILLを持っているので「やりたいこと」「できること」が明確です。
実際に仕事をしてみて合う、合わないはあります。どうしても合わない部分があれば、すぐにさよならできますが、正社員だとそうはいきません。合う方とは長くやるし、テーマが変われば違う人にジョインしてもらいますね。
渡邉:複業・業務委託特化型マッチングサービスの「複業クラウド」をどういう戦略で使い、実際どんな人と出会えましたか?
畑:まず営業を募集しました。営業活動をサポートしてもらう目的で応募し、現在は5名の方に協力いただいています。
そんな中で、Webマーケティングという課題が出てきたため、Webマーケター募集をかけました。今は伴走してもらっています。「複業クラウド」を通じて、素敵な人と出会えました。
渡邉:営業人材には、どのような課題の解決を求めていたのでしょうか。
畑:アポ獲得のみをお願いしたくて募集しました。その後の商談やクロージングは今のメンバーができるので。一緒に商談を進めながら、会社をより深く理解してもらえてきたら、ゆくゆくはアポ獲得以外のフェーズもお願いしたいと思っています。本人が希望すればの話ですが。
渡邉:アポ獲得は、どのように行いましたか?
畑:人脈営業ではありません。すでに営業先はあるのですが、僕らのリソースが足りず、手が回らない状況でした。その部分をフォローしてもらう、というカタチの営業です。
渡邉:外部人材の登用の仕方には「事業や課題を解決するためのノウハウがない」「やることがあるけれどリソースがない」ふたつのパターンがあり、ウェブマーケの方は前者、営業は後者の狙いがあったんですね。今後も事業展開によって、ぜひ「複業クラウド」を使ってください。
※本記事は、2022年4月20日に開催された株式会社Another works主催のオンラインセミナー「いま求められる、トップダウン型から自律型組織への変革 〜外部リソース活用による自律的組織創りの全貌〜」の内容をもとに再構成しました。
弊社「株式会社インヴィニオクロス」は、人や組織が持つ「感情」や「内発的動機」に着目し、多彩なバックグラウンドを持ったコーチ&ファシリテーター陣とともに、人や組織の変革プロセス&組織の拡大に伴い必ず起こる組織の諸問題の解消に伴走しています。クライアント企業は、大企業~成長プロセスにあるスタートアップ企業まで様々です。
パッケージサービスではない、それぞれの企業のカルチャーやニーズ(課題)に合わせたコンサルティングやプログラム設計を強みとしています。随時無料コンサルティングを実施しておりますので、組織に関するお困りごと・お悩みなどございましたら、お気軽にご相談ください。