コーチングは”自分の心の奥に辿り着くこと”!対話を通じて本質にアプローチする方法とは?
講演者
■ゲストスピーカー
小倉 嘉夫氏
銀座コーチングスクール和歌山校代表
1966年生まれ。営業職時代に約5000枚の名刺を獲得。営業職として広告会社に入社し39歳で取締役に。人事及び派遣責任者として面接を行った人数は1000人以上。編集長兼責任者として転職情報誌やフリーペーパー創刊や求人マッチングサイト・情報検索サイト・イベント&キャスティング事業を立ち上げる。さらに社内のITネットワーク構築やシステム導入及び総務・人事・制作・編集等の各部門責任者を経験。退職前は地域活性化を目的として行政との連携に取り組み、複数の行政とプロモーション協定を締結。32年間勤務した広告会社での常務取締役ポジションを捨て、54歳で起業。
■モデレーター
畑 俊彰
株式会社インヴィニオクロス 代表取締役 兼 株式会社インヴィニオ プロデューサー
2004年に株式会社ベンチャー・リンク入社。2009年日本郵便株式会社に入社。同社にて、組織風土改革、異業種他社との共創PJの推進など、多数の組織横断プロジェクトを牽引。2018年株式会社インヴィニオに入社。企業の組織変革・リーダー育成に携わる。2021年3月より現職。
コーチングを導入した企業の事例
畑俊彰(以下、畑):今回ご紹介するのは、大手SIerの支援事例です。創業以来、業績拡大の一途を辿っていましたが、コロナ禍で成長が鈍化し、社内に危機感が漂っていました。特に管理職へのプレッシャーは大きく、集合研修とは異なる対策が必要とされていました。そこで弊社にご依頼をいただき、3ヶ月間のコーチングをトライアルとして実施しました。
小倉嘉夫氏(以下、小倉):2年目の管理職50名から希望者を募ったところ、18名の手が挙がりました。私はその内11名のコーチングを担当したのですが、みなさん、営業の現場から管理職になったばかりで、全体的に手探り状態という印象でしたね。「なぜ自分が管理職になったのかわからない」「管理職としてどう仕事を進めればいいのかわからない」というお悩みを抱えていました。
畑:それでは、実際にコーチングを受けた方がどのように感じたのか、アンケートを見てみましょう。「自分自身を改めて見直す貴重な場になった」「考え方に変化があった」という好意的な感想をいただいています。
小倉:「会社に非常に感謝している」という声もありますね。「また受けたい」というご希望だけでなく「来期、2年目になる管理職も絶対に受けるべきだ」と推薦してくださった方もいます。「受けたい時に受けられる環境がほしい」というご要望もいただいています。
畑:コーチングを受けた方がどのようなメリットを感じたのかも見てみましょう。「自分が抱えている本質的な問題に気付くことができた」という声をいただいていますね。
小倉:「仕事で手応えを感じるようになった」だけでなく「集合研修とは違って自分自身の課題にアプローチできた」とコーチングならではのメリットを感じた方もいるようです。
畑:通常のコーチングは、2週間に1回、半年程の継続で効果が出てくるものなのですが、今回は月1回を3ヶ月間という頻度も期間も少ない中でのトライアルとなりました。それでもご紹介した通り、結果は非常に好評で、継続・拡大を望む声が多く、来期からは大幅に規模を拡大して継続していく予定となっています。
どのようにコーチングを進めていくのか?
畑:実際のところコーチングって、どのように進めていくんでしょうか?先ほどご紹介した企業の事例では、小倉コーチはどのようにコーチングを進めていかれたんですか?
小倉:初回は仕事について考えていることをマンツーマンで話してもらいました。「他にどんなことがありますか?」と聞きながら頭にあることをすべて出してもらって、その中で一番気になっていることを選んでもらうのです。
畑:頭の中にあるモヤモヤを言語化していくイメージですね。なかなか難しそうですが、みなさん初めからうまく言葉にできるものでしょうか?
小倉:ある程度は人によるところが大きいですね。今回の事例でいくと、ほとんどの方が初回からスムーズに話せていました。最初のうちはうまく喋れないという方も、だんだんと慣れていきますから、自分の中の課題を絞り込めていくものですよ。
畑:そうなんですね。2回目に向けて、何か課題を出したりするんですか?
小倉:はい。セッションの最後には、次回までにどのようなアクションを取るかを必ず決めてもらいます。「仕事のやり方を変える」という人もいれば「本を読む」という人もいて、人によって取るアクションは本当にさまざまです。
畑:その後、2回目以降はどのように進めていくんでしょうか?
小倉:1回目で明確にした「自分が意識していること」を深めていくことが多いですね。テーマは基本的にフリーなので、違う話をされる方もいますよ。クライアントの皆さんの気になっている部分の深堀りを、我々コーチが手助けしていくイメージです。
畑:アドバイスとはまた違うのですね。クライアントに変化が起き始めるのは、だいたい何回目以降でしょうか?
小倉:2回目から半分の方には変化があります。そもそも自分の話に素直に耳を傾けてもらうという経験をすること自体が初めてという方が多いので、みなさん何かしらの発見をされていますね。社内では、自分の意見を言っても何かと否定されてしまいがちですから。
畑:となると、利害関係のない外部の人間がコーチであることが重要なのでしょうか?
小倉:その通りです。社内コーチングが実は一番難しいんです。社内だと、上下関係や利害関係など、いろいろな制約がありますよね。外部にコーチングを依頼するメリットはそんなところにもあるんです。
そもそもコーチングとはどのようなものなのか?
畑:そもそもコーチングってなんなのしょうか?プロコーチである小倉さんの考えを教えていただけますか?
小倉:コーチングとは心のずっと奥に行き着くことだと僕は考えています。コーチングをすることによって「なぜこんなふうに思うのだろう」「自分の本当の願いはなんなのだろう」ということがわかるようになるんです。自分の考えが湧き上がってくる場所、そこに辿り着くことが僕にとってのコーチングです。
畑:入社して責任が増えていくと「やらされ感」が強くなっていきますから「そもそもこの会社で自分は何をしたかったのか?」と改めて問われる体験は必要とされているでしょうね。
小倉:特に経営層の方々はそうでしょうね。「自分がやりたいことはなんだったのか?」というところに立ち帰ることができるので。
本当に自分がしたかったことはなんだったのか、そのためにはどうすればいいのかを、コーチと共に考えていくのがコーチングです。その結果、自分自身の気付きや学び、そして成長につなげることができるんですね。「そんなの面倒だ」「結果だけ出せればいい」と感じるのであれば、コンサルティングでいいんです。
畑:その辺りは、コーチングがフィットする企業としない企業の話にもつながりそうですね。
小倉:そうですね。最低限、経営層のコーチングへの理解は必要ですね。トップでなくてもいいので、組織を動かす立場にある方々が、コーチングとはどのようなもので、どのような効果があるのかをわかっていないと。
トップダウンをやめたいと思っている組織であることも重要です。「とにかくコーチングをやれ」と上が下に押しつけるのでは、表面的な導入に終わってしまい、なかなか結果に結びつきません。
畑:「上からの指示に従っていればいいんだ」という環境では、コーチングが効果を発揮しづらいのですね。
小倉:そうなんです。最近は自律型社員を求める企業が多いですが、そういった組織とは相性がいいでしょうね。コーチングは社員の自律を促しますから。
なぜコーチングを導入する企業が増えているのか?
畑:最近、コーチングを導入する企業が非常に増えていますよね。この背景には何があるのでしょうか?
小倉:社員間のジェネレーションギャップが大きいですね。40〜50代の管理職と20代の部下では、物事の考え方がまったく違います。指示の出し方など、言葉の使い方もかなり違いますから、本人にそのつもりがなくても「パワハラだ」と言われてしまったりするんです。若者だけでなく、最近話題になっている働かないおじさんのセカンドキャリアを考える上でも有効ですよ。
コロナ禍によって在宅勤務が普及し、気軽に会議ができなくなって、意思の疎通が難しくなりましたよね。そんな時、コーチングのスキルを使えば、オンラインでもしっかりと対話をすることができます。その人が何を求めているのか、価値観や本質の部分にアプローチすることができるようになりますよ。
畑:コーチングを導入する際、担当者が注意すべきことはありますか?
小倉:強制しないということが大切です。嫌がる社員に無理矢理コーチングを受けさせても、なかなか効果は出ないものです。やはり希望制で導入したところが実績を出していますね。まずは少ない人数でも、受ける側の希望制で開始するのが一番です。
あとは、担当の方ご自身もぜひコーチングを受けてみてください。効果を実感しながら導入を進めていただくとよりスムーズです。導入後、社内でコーチングを継続していきたいと思われたら、管理職の方々にコーチングのスキルを学んでいただきたいですね。そうすることによって、コーチング的アプローチが社内の資産となっていきますから。
畑:小倉コーチはさまざまな企業でのコーチングを実践されていますよね。企業内でコーチングはどのように受け止められているのでしょうか?
小倉:コーチングを受けてみたいと思っている社員は多いでしょうね。これまで僕が担当した方々は、望んで受けている方がほとんどで、コーチングの時間をとても大切にしてくれていました。一方で受けさせる側の管理職はというと、本来の職務ではないことに時間を使わせることに抵抗がある方もいるだろうと思います。
畑:なるほど。とはいえ最近は、部下との1on1に課題を感じている管理職も多いようです。若手をモチベートするスキルも必要ですし、「自分の業務もあるのに…」と苦しむ声をよく聞くのですが、管理職向けにコーチングを教える集合研修のようなものも用意されているのでしょうか?
小倉:ありますよ。去年は大手電気工事会社に所属する40〜50代の管理職230名を対象に、コーチングの集合研修を実施しました。今年は、その一つ下の層の管理職に対しても集合研修を実施する予定です。あまりコーチングという言葉を前面に出さずに、対話のスキルとして実践しやすい研修になるようにしています。
畑:確かに、コーチングという言葉に抵抗がある方もいるでしょうからね。
小倉:そうですね。一方的に教えるというよりは、実際に体験して効果を実感してもらうことを重視しています。「背中を見て学べ」と言われてきた世代も、そうすると腑に落ちやすいですよね。僕たちがそういった工夫をすることで、多くの方にコーチング的アプローチが広まっていくといいなと考えています。
※本記事は、2022年3月23日に開催された株式会社インヴィニオ主催のオンラインセミナー「なぜ今多くの企業がコーチングを導入するのか?-孤軍奮闘する管理職&コーチングによる変化とは-」の内容をもとに再構成しました。
弊社「株式会社インヴィニオクロス」は、人や組織が持つ「感情」や「内発的動機」に着目し、多彩なバックグラウンドを持ったコーチ&ファシリテーター陣とともに、人や組織の変革プロセス&組織の拡大に伴い必ず起こる組織の諸問題の解消に伴走しています。クライアント企業は、大企業~成長プロセスにあるスタートアップ企業まで様々です。
パッケージサービスではない、それぞれの企業のカルチャーやニーズ(課題)に合わせたコンサルティングやプログラム設計を強みとしています。随時無料コンサルティングを実施しておりますので、組織に関するお困りごと・お悩みなどございましたら、お気軽にご相談ください。