【セミナー公開】後編:カルビー流郷氏に聞く 「全員活躍」に向け「1on1」に取組む理由&孤軍奮闘する管理職260名への支援策とは?
【セミナー公開】後編
直近6ヶ月の「1on1」研修の振り返り

畑俊彰
後半戦の前に、
7月のキックオフから始まって、
50〜60回ほどの
実際のセッションの様子を
5分ぐらいで
ザッとダイジェストに
まとめました。
ダイジェストを見ていただくと
なんとなくどんな空気感なのかが
伝わると思うので、
動画を流します。

畑俊彰
半年ちょっと前ですけど
なんか思い出しますね!

流郷さん
今回オンラインで、
全部で対象になる部長・課長の合わせて
260名ぐらいのみなさんと
対話をしながら、
不安や、その場で起こっている
葛藤みたいなものも、
結構、赤裸々にお話しいただきました。
同時に、
みんなで対話しながら、
乗り越えていくというような
3〜4ヶ月のトレーニングを
行いました。
『正解はありません』
というところから、対話中心の形で進んできました。
今まで参加してきた研修とは毛色が違うということで、
戸惑いの声などもあったことを
すごく記憶しています。

畑俊彰
その後、3ヶ月経って、
どんな変化が起きたのか?
について、
流郷さんの視点から
もし感じていることがあれば、
ぜひ共有いただければ
と思いますがいかがでしょうか?

流郷さん
まず、1on1には、
・教えられない
・正解がない
ということを伝えたとき、
ちょっと混乱というか、
正直、最初は、
アンケートの結果も
ネガティブな声が
実際にありました。
しかし、
その後、
やっていって手応えを感じたのは、
『対話って良いよね』ってことに、
マネージャー達が
気づき始めたということです。

流郷さん
結局、マネージャー達も、
孤立していたのかな?
と、いうふうにも感じました。
あまり、
職場の中で語り合ったり、
ある意味、
自分が出来ていなかったことを
オープンにして対話することや、
相談する機会がないのだと
いうことに気づきました。
マネージャー達も、
こういう機会がすごく重要で、
最初は、
「研修の時間を短くしてくれ」
という話もあったのですが、
「もっと研修の時間がほしかった」
というように、
対話というものに対する
捉え方がポジティブに変わったことを
実感しています。
やはり
部門を超えて、
ということの大事さを
まずは実感しました。

流郷さん
1on1に関して言えば、
人事がこれだけ取り組みたいと
言っているのだから、
まずは、やってみようという
一歩を踏み出すきっかけになったと
思っています。
「やってみたら、
やっぱり良かった」
という声もありました。

流郷さん
そういえば、
昨日、新人課長研修というものを
やってきたのですけど、
その中で、1年間の振り返りをしました。
その中で、
広島のポテトチップスを
作っている工場の製造課があって、
そこの課長さんが、
『契約社員の部下も含め、
149名の部下と1on1を実施した』
という話しがありました。
149名に対して、
2ヶ月ぐらいかけて、
1on1をやったという話を聞いて、
特に契約社員の方から、
「初めて自分の声を聞いてくれた」
という声をもらったと嬉しそうに話していました。
さらに
ベテランの社員の方からは、
1on1の中で、
「自分を利用してほしい」
っていう言葉があったそうなんです。

畑俊彰
おおー。

流郷さん
ベテランの社員の方だから
いろんな知見があるわけですよ。
それをきっかけに
何が始まったかというと、
Teams(マイクロソフトのグループチャット)
のなかの、スレッドを立てて、
『〇〇さんの相談室』のような形で、
いろいろなナレッジのシェアをしたり、
その中で若手や中堅が、相談し合う
ということがありました。
背景的には、
これまで話したくても、
話せなかったという
ことなのだと思います。
広島弁のアンケートの内容を
そのまま読み上げますと
「ずっーと
(私もプロジェクトに参加したいと)
言いおったんよー。」
という、積極的な意見もあり、
これまでプロジェクトに
参加していなかったような人が
参加するようになった
という話です。

流郷さん
主体性が、
数珠つなぎのように
発展して、
あっ、そんなことも
あるんだな!と思って、
改めて『凄いな!』って思いました。
それも、
149名なんか出来ないよって、
思っていたようなのですが、
やはり、その取組みを行うことを
聞いていた、他のメンバーも
変わるんですよね。
「それだけの取組みを
行っているんだったら、
自分もやってみよう」
ということもありました。

流郷さん
あと、面白かったのが、
特に工場の製造現場など、
「場所がないから、
1on1が出来ない」
というケースもあるのですが、
工場の隅っこで
パーテーションを区切って、
場所を作ってやってみたなど、
『出来ないからやらない』ではなく、
『やれるように工夫する』
という変化がありました。

流郷さん
「正解がない」ということに
対しても、
「正解がないという言葉に、安心しました」
という言葉があったり、
これまでは
「こうやらなければならない」という
呪縛から解かれた気がしましたという声もあがっています。
1on1が、これまでは、
カチカチしていた
気がします。
傾聴を意識するあまり、
「自分は話してはいけない」
と思い込んでいるということも
ありました。
でも、
メンバーが求めているならば、
自然に (自由に) 話せるような、
『柔軟な姿勢に変わってきた』ということも1つの変化です。

畑俊彰
面白いですね。
月に1回やらなければ、とか、
全管理者が全員やらなければ、
ということよりも、
今年度は、真逆のメッセージを
発信したなかでも、
チャレンジが動き始めるということは
すごく面白いですね。

流郷さん
「必須です」とか「やってください」
と言うと、
返ってやらなくなる
という気がしていて、
改めて、
「対話の力」を教えてもらった
感じがします。

畑俊彰
今までは会議室などで
「傾聴しなきゃ」とか、
あまりに真面目なので、
忠実にやろうとして
ガチガチになっていたところが、
だんだん、
肩の力が抜けてきた、
ということがあるのかもしれませんね。
1on1に対する本音や弱音も
吐き出しながら取り組めたことで
むしろ1on1に対する型や、
現場の管理職のみなさんの
見方が変わっていったような
そんなところがあるんですね。

流郷さん
そうですね。

畑俊彰
ありがとうございます。
今後に向けた課題感やテーマ
『上司部下&組織の壁を越えチーム全体で対話』

畑俊彰
最後に
僕からなんですが、
今年度、アップデートというか、
『守破離』の
『守』から『破』へと、
破っていくようなフェーズに
入っていったのだと思います。
その中で、色々見えてきた課題など、
現在、見えている景色なども
あるのかなと思うのですが、
今、カルビーの人事として、
課題感やテーマなどあったりしますか?

流郷さん
1on1に関して、
さきほどは良い事例を
お伝えしたのですが、
全員ができているか?
というと、
まだそこまでは行っていないと
思っています。
なので、
これまでの良い事例、
良い火種が生まれてきているので
それをすごく大事にしていきたいと
思っています。
そこが、今後、
伝播していくような
気がしています。
起きている良いことを
見過ごさないことを
意識していて、
しっかり取り上げて、
まだ火が起きていないところに
どのように火を起こしていくのか?
という部分が、課題です。

流郷さん
もう1つの課題として、
やはり組織内・組織間の
コミュニケーションが希薄だということも
大きな課題です。
組織をまたいだ
コミュニケーションの場を
作っていきたいという声が
上位層からすごく出てきていて、
次年度は、
部長だけの(組織横断の)
コミュニティの場を
作っていきたいと思っています。
そこで何が起こっていくか
分からないですが、
取組みたいと思っています。
さらに、
個人的に思っていることとして、
いつかは1on1を越えたいな、
と思っています。

流郷さん
1on1は、基本的に
マネージャーと
メンバーの
コミュニケーションなので、
大事だと思っています。
とは言え、
本当はマネージャーと
メンバーの間だけじゃなくて、
チーム全体で対話が
生まれる状況にできたらと
思います。
かってに
1on1がチーム内で
起きているような
(上下関係以外の)
有機的な関係性や対話、
助け合い、ナレッジのシェア、
一方で、健全なコンフリクトも
含めた多様な対話が
起きている状態を
目指せたらと思っています。

畑俊彰
なるほど、なるほど。
そういう意味では、
1on1がチームとして
上司・部下に限らず
チーム内で日常的な対話や
お互いの関わり合うようなことが
基点として、機能しはじめて
いるのかもしれませんね。

流郷さん
そうなっていくと
良いなと思っていて、
やはり、マネージャーの仕事って、
改めて大変だと思うんです。
マネージャーだけに
(組織のコミュニケーション課題を)
負わせるのではなく、
上司部下を越えて
相互に、1on1を行うような
関係性が出来ていたら素敵
だなって思ったりします。

畑俊彰
そうですね。
マネージャーの皆さんが
すべてを抱えるというのは、
業務を抱えたプレイヤーとしても、
育成も任されて、1on1も行う
というよりも、
チームとして役割分担して
出来るような組織としての
状態を作れると理想なのかもしれないですね。
残りの時間
いくつか皆さんからの
質問にお答えできたらと
思います。

畑俊彰
『カルビーさんの中で、
1on1で得られた知識を
どう蓄積し活用されているのでしょうか?』
という質問です。

流郷さん
組織として、
1on1の情報を
蓄積や活用などは
していないです。
1on1で起きていることについては、
ちょうど今、エンゲージメント調査の
フィードバックのセッションをしています。
スコアが上がったセクションを
取り上げて、
社内でその事例共有をしています。
1on1でのやり取りが、
1on1以外のどんな取り組みに
繋がったのか?ということの
事例共有を
フィードバックセッションの中で
行っています。

畑俊彰
『1on1が必須ではない、となったときに、
これ幸いと、1on1をやらなくなる人も
いると思うが、人事として介入しないという
方針・スタンスなのでしょうか?』

流郷さん
人事が、
あなたやっていないから、
やってください!
と言った途端に
当事者意識が
なくなってしまうのだと
思います。
やらされているから
やっています、
という態度になってしまって、
全然、魂が入らないと
思うんです。

流郷さん
そのような介入の仕方は、
私はあまりしたくないと
思っています。
あくまで、
指導ではなく、
支援の立場にいたいんです。
なぜなら
マネージャー職は、
本当に大変なんです。
だから、
その支援のツールとして、
1on1というものがあって、
「これをやったら、
こんな良い結果が
隣で出ているよ」
「他部署でも出ているよ」
ということを伝えたいと思っています。

流郷さん
もしかしたら、
組織にとっては、
優先的にやるべきことが
1on1ではないケースも
あると思っています。
基本的には、1on1は、
1つの最強のツールだと
思っています。
ただ、もしかしたら、
セクションによっては、
別の違うやり方や
優先すべきことがあるならば、
私は強制はするべきじゃないのかな
と感じます。

畑俊彰
1on1を
100%やらせることを
ゴールにしていない
ということですね。

流郷さん
そうですね。

畑俊彰
もしかして、
違う現場で、
課題の打ち手として、
1on1が本当に意味があると
思えば、徹底的に支援は
できると思います。
一方、場合によっては、
他の方法を優先的に進めるという
ケースもあるかもしれない、
ということですね。

流郷さん
そうですね。
そういったケースも
あるかもしれないと
思っています。

畑俊彰
今回、お話を伺っていて
カルビーさんの中で
2年間しっかり、
基本的なトレーニングと
実践をかなりされていて、
実践知が溜まっていたことで
今回、プログラムが
フィットしたのかなと
思いました。

畑俊彰
『1on1を導入したことによる、
副次的な効果などはありましたか?』

流郷さん
メンバーからの
声掛けや提案が
増えたことで、
業務の滞りが少なくなったという声は
聞いています。
前半でお伝えした、
広島の工場での事例でも、
プロジェクトへのメンバーからの
主体的な参加に繋がっています。

流郷さん
あと、
去年のプログラムは
対話型で実施したことで、
いまだに、そのグループで
オンライン飲み会をしていたり、
(人事から促している訳ではなくても)
行われていました。
部長達がもっと組織を越えた形で
いろいろなテーマを語り合いたいと
いうニーズが、人事側に
寄せられてきたり
ということが生まれています。
副次的という意味では、
(自発的な取り組みが)
組織を越えたというところが
副次的だと言えるのかなと
思っています。

畑俊彰
たしかに、
研修や対話のセッションの中でも
組織や部署を越えて、
部長、課長ごとに
対話が生まれたことが貴重だということを
流郷さんが話されていました。
それぞれ、いろいろなものを
背負っていて、立場を背負っているので、
このような場でもないと、
そこから抜け出せないということが
あるのかもしれませんね。
そういう意味では、
研修を通じて出会った社員同士が、
オンラインで工場の垣根を越えて、
繋がったりということが
起きているということですね。

流郷さん
そうですね。そうですね。

畑俊彰
それは、
想定外の動きとしては、
すごく嬉しいですね。

流郷さん
そうですね!

畑俊彰
1on1をこれから導入する企業さんの場合、
スタートがすごく大事だと
思います。
最初に、
社内のみなさんに
どのように理解を得ていくのか?
手応えを感じていただくのか?
などの悩みがみなさん、
違うと思います。
会社ごとのカルチャーによって
人事としてどんな支援をしたら良いのか?
なども大きく変わると思うので、
そのような悩み・課題については、
いくらでもディスカッションやご相談に
のることが出来ます。

畑俊彰
お気軽に相談いただければと
思います。
無料で壁打ちディスカッション、
頭の整理なども
お付き合いしていますので、
ご希望があれば、
予約フォームから
受け付けています。
最適なご支援の方法を
ご提案することも可能ですので、
ぜひ、お気軽にメッセージください。
流郷さん、本日は
誠にありがとうございました!